沖縄の屋根獅子(魔除獅子)
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序
琉球の屋根獅子はそのひとつびとつがそれぞれちがった表情または姿態で表わされ、くめどもつきない面白さを秘めているものです。
それは琉球の風物詩の一頁を飾るにふさわしく、また琉球文化を独特のパターンで織りなす素材のひとつに加えることもできます。
民俗との結びつきもさることながら、古くは建築装飾としても重要な役割を果たしていたことが、多くの実例を通して知ることができます。
その起源は祖形という意味でこれまでの調査結果ではだいたい14〜15世紀頃までさ
かのぼるのではないかと考えられています。はじめは貴族の生活と深い結びつきを
もって生まれ、後代になって多分に庶民的な性格をおび今日に至っているものです。
その最盛期は、琉球における住宅建築と照らし合わして、だいたい昭和の初年代から10年代にかけてでしょう。
第二次大戦後は住宅建築の事情ばかりでなく、生活思想の面にも大きな変化がみられ、都市地区ではいくぶん衰退の気配をみせてはいるものの、沖縄の人々はなかなか屋根獅子に対する愛着を捨てることができないようであります。
否、むしろ農漁村地域では住宅事情の好転に伴って、今日ほど屋根獅子が隆盛をきわめた時期はなかったのではないかと思われるほどです。
ここで紹介する屋根獅子はそのほとんどが戦後の作で、戦前の古いものはわずかに十数例に過ぎません。しかし、戦後のものでもその表現上の様式や形式に大差はなく、伝統的な技術を踏襲していることはいうまでもありません。
紹介する範囲は沖縄本島、宮古島、石垣島など主要な島だけにとどめ、その他の離島は一部しか含まれていません。
本稿ではこれまでの調査結果をものに次の四項目について考察を進め、琉球の屋根獅子の全容をできるだけ明確につかんでみようとこころみたものであります。
1.琉球の唐獅子の中で屋根獅子の占めている位置
2.屋根獅子の起こり
3.屋根獅子の様式、形式、素材
4.屋根獅子のつくり手及び分布と用法
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